オルゴールの故郷に深く迫る

日本の小樽オルゴール堂のムーブメントが実は台湾製だったとは!

日本の小樽オルゴール堂のオルゴールムーブメントが実は台湾製だったということをご存知でしょうか?誠品(eslite)の店舗や観光スポットなどで、知音文創のオルゴールがよく見られます。様々なオルゴールのDIYアクセサリーは大人から子供まで愛されていますが、なぜオルゴールにのせている小物が回るのか、考えたことがありませんか?実は、オルゴールのデザインには深い知識があり、特にオルゴールを動かす精巧なムーブメントがキーポイントなのです。

ポイント:オルゴールのムーブメントは「ミュージックベル」とも呼ばれています。ケースまで組み立てられた完成品は「オルゴール」と言うのですよ!(協櫻会社は日本のサンキョー(Sankyo)のOEM工場であり、Sankyoの専門用語ではムーブメントを「ミュージックベル」と言います。)

音樂盒的機芯特寫
オルゴールのムーブメントの大写しです。(画像の出典:台湾現代ミュージックベル博物館。https://www.facebook.com/sankyomusical/)
協櫻廠房與週邊
左図は協櫻の製造工場の旧正門であり、右上図は協櫻周辺の緑豊かな農地です。右下図はかつての協櫻の正門で、櫛歯はオルゴールが美しい音楽を奏でる重要な部品のため、会社の壁は櫛歯をイメージしたデザインとなっています。

実は、台湾で市販されているブランドオルゴールの中で、ほとんどのムーブメントが「本場の台湾製品」です。人文と音楽の豊かな知識を持つ台中の霧峰に位置する【協櫻精密工業】が、台湾のムーブメントの発祥地です。亜洲大学国立台湾交響楽団(NTSO)に隣接し、台中の精密金属工業の町にあるオルゴールムーブメントの工場は、実際には皆さんが想像しているものとはかなり異なるのです。

実は、かつて台湾は世界最大のムーブメント生産国であり、世界中のオルゴールの40%が台湾製であったことをご存知でしょうか?しかし、演奏する曲が決められている状況のため、オルゴールは徐々に忘れ去られていってしまいました。そのため、私たちは現在台湾唯一のオルゴール工場:協精密工業を訪れ、ムーブメントの量産プロセスを深く理解したいと思っています。

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伝統ムーブメントの組み立ての大写しです。従業員がゼンマイを入れています。
音樂鈴的製程使用半自動化的組裝線
ムーブメントの製造プロセスにおいては、半自動化された生産ラインを使用し、さらに従業員が丁寧に検査と加工を行います。

ムーブメントが高度に自動化された産業である

オルゴールのムーブメント工場に対するイメージは、職人さんが作業台で金属を磨いたりすることをお持ちの方が多いかもしれませんが、実際に工場に足を踏み入れたら、きっと目の前にある自動化された生産ラインで固定観念が覆されるでしょう。

生産近代化のムーブメントは高度に精密な金属産業であり、自動化された生産ラインを通じてコスト削減ができ、手頃な価格での販売もできるようになりました。これは、職人さんの技が受け継がれて革新されてきたことを示すと共に、ムーブメントを愛する方々が誰でも気軽に手に入れられるように努力してきたことも示しています。

ムーブメントの背後にある物語

オルゴールの舞台裏のヒーローである台湾唯一のムーブメント製造工場:【協櫻精密工業】にインタビューしました。協櫻が日本のSankyoと連携してオルゴールムーブメントを製造するところから始め、その後「聴見幸福」との取り引きで台湾におけるオルゴールが流行り始め、さらに現在の「知音文創」のブームを盛り上げるまでの過程を、皆さんと共有したいと思います。様々な特許ムーブメントを開発・研究している協櫻は、台湾が世界の工場であった時代や海外生産移転を経験してきました。このように努力してきた協櫻は、台湾経済が飛躍的な発展を遂げた歴史の生き証人ばかりでなく、現在の台湾の産業改革の時代においても良い模範となっています。

這個音梳片是我們用來開發第一代智慧音樂盒Muro Box的關鍵零件
こちらは協櫻が生産した20弁の紙ディスクムーブメントで、この型番の櫛歯も、初代Muro Boxの開発に使用した重要な部品です。

台湾におけるムーブメントの歴史=協櫻の歴史

独占インタビュー中に、協櫻のオルゴールムーブメントの事業を立ち上げてきた部長の黄龍渓が、台湾におけるムーブメントの製造と研究開発の道のりについて、詳しく語ってくれました。

「協櫻は、日本のSankyo(三協・サンキョー)との合弁会社であり、台湾において専門的にオルゴールムーブメントを製造する会社です。」

黄部長は台湾が世界の工場であった時代を振り返りました。当時、彼が勤めていた台湾三櫻会社は、日本の三協会社からムーブメントの生産拠点をもう一つ台湾に設立するよう要請を受けました。そのため、黄部長が単身赴任して日本Sankyoの本社へムーブメントの製造技術を学びに行きました。帰国後、台中霧峰にオルゴールの生産拠点を設立することを計画しました。【協櫻】という名前は、日本三協(Sankyo)と台湾三櫻の名前から一字ずつ取って名付けたのです。

各式各樣的音樂盒機芯
展示ケースには協櫻が生産した様々なオルゴールムーブメントが並んでおり、こちらの大写しの写真には最もよく見られる型番がいくつかしか写っていません。

「1979年(民国68年)のころ、台湾はすでにムーブメントを使用して様々なオルゴールを生産し、海外へ輸出する主要な国となっていました。台湾は日本より人件費が安いし、それに台湾三櫻との技術コラボの経験を持つため、オルゴールムーブメントの製造から始まった日本三協会社が、連携について話し合いに来ました。

当初、日本側は投資後に損益分岐点に達するまで三年かかると予想していましたが、驚くべきことに台湾は初年度からすでに利益を上げ始めました。」

協櫻の製造工場の高品質生産が、この不可能な任務を成し遂げ、日本の方を驚かせました。

黄部長は、ムーブメント製造における品質基準を説明するために、次に二つの例を挙げました。

「ある日本の客先は、基準を満たすために、18弁ムーブメントのシリンダー回転速度の誤差範囲を±2秒以内に設定するように要求しましたが、協櫻製のムーブメントは±1秒以内で対応できます。」

「日本Sankyoはオルゴールムーブメントの騒音基準値を60デシベル以下として設定しますが、協櫻は45デシベル以下に抑えて出荷しています。」

このような小さなオルゴールムーブメントの裏には、どれだけの努力とこだわりが詰まっているのか、想像するのが難しいですね。

日本原廠音樂盒機芯
協櫻が改良する前の日本によって設計された機種です。

日本と同じく優れた品質

それだけでなく、協櫻製の新型の18弁ムーブメント製品は日本製のに比べては引けを取らないです。例えば、初期の日本Sankyoのムーブメントの設計では、輸送時や工場の不用意な組み立てによる歪みと変形という問題が起こりがちでしたが、お客様から報告された問題をしっかり理解した協櫻は、元々のガバナーの保護装置を改善し(下図に示すように、ガバナーの外側にある緑のプラスチック部分)、ガバナーの回転速度(音楽のテンポ)の安定性を向上させました。

協櫻改良(左)和日本原廠設計(右)的音樂盒機芯
協櫻が改良したムーブメント(左図)と日本純正工場が設計したムーブメント(右図)ですが、その構造上の違いを見分けられますか?

「日本Sankyoはブラインドテストを通じ、協櫻工場のムーブメントと日本純正工場製品の設計品質を比較しました。つまり、目隠しをして、聴くだけでムーブメントの品質を区別するということです。」

「結果として、テストに参加した全員が、誰もどれが日本製のムーブメントかを区別できなかったのです。つまり、台湾製のムーブメントは値段が安くて音質も良いということですね。」

その後、日本造幣局が高品質なオルゴールを記念品として発売する際に、協櫻が開発した新型の18弁ムーブメントを指定して採用しました。これにより、日本Sankyoが台湾工場の設計を使用し自社製品の改良を受け入れ始めました。これは協櫻の小さな勝利であるばかりでなく、今までの無視できない台湾の技術力も反映しています。

日本長官訪視協櫻的生產線
日本Sankyoの上層部が協櫻の生産ラインを視察し、黄部長がご案内いたしました。(画像の出典:台湾現代ミュージックベル博物館。https://www.facebook.com/sankyomusical/)

台湾ムーブメントの設計と研究開発

しかし、今までの成功は当然のものではないと黄部長が語りました。当時、彼はすでに設計スキルを習得する重要性をあらかじめ認識していたため、積極的に様々な新型のオルゴールムーブメントを研究開発していました。オルゴールファンの皆さんは、知音文創やほかのオルゴールブランドで、マッチ箱サイズの箱に取り付けられたミニ18弁ムーブメントを見たことがあるでしょう。それこそが黄部長の主導で研究開発を進めてきた成果なのです。モーター機種やゼンマイや手回しタイプ或いはつまみ付きタイプなど、いずれも台湾本場の研究開発された特許機種です。

可用在各式音樂盒上的迷你音樂鈴
ミニムーブメントは台湾の研究開発の成果です。

さらに、協櫻は金属の材質からオルゴールのデザインを改良しました。例えば、

「オルゴールのベースの材質と重量、及び櫛歯の鋼材と熱処理後の硬度が、音質に影響を与えるので、それこそがムーブメントのコア技術なのです。」

黄部長が私たちにこう教えてくれました。オルゴールムーブメントのベースに最も適した材質は亜鉛合金で、音の共鳴に温かみのある響きがあるからです。しかし、ベースの重量と構造の組み合わせが密接に関わっています。異なる重量の亜鉛合金ベースで作られたムーブメントを比較してみると、音質に明らかな違いがあることが判明しました。

「それに、櫛歯の材質もキーポイントです。」

櫛歯は製造プロセスが非常に複雑で、音楽を奏でる重要な部品です。元々の23弁オルゴールの櫛歯に鉛のおもりをつけることで、櫛歯の重量が増え、低音域の振動がはっきりと表せるようになります。しかし、環境意識が高まる現在において、鉛を含む製品は安全規格認証の取得ができず、欧州連合(EU)やほかの関係国への輸出もできません。特に、子供たちはよくオルゴールをおもちゃのようにもてあそびがちで、もしオルゴールの部品を口にしてしまったら大変なことになるでしょう。それで、EUの鉛フリー検査仕様に準拠するために、協櫻は鉛フリーの材料を採用し、23弁の櫛歯を再設計しました。

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黄部長が櫛歯を手に持ち、製造プロセスを解説してくれました。

電子式ムーブメント

実は1984年(民国73年)に、協櫻精密工業にはいくつもの電子部品の生産ラインが設けてあり、幼児向けおもちゃや音が鳴るバースデーカードなどの大衆消費電子製品(CE)用の電子部品を生産しており、従業員数は500人に達していました。我々が子供の頃によく買っていた、開くと音が鳴るようなお祝いカードは、現在ではあまり見かけませんが、実はそのカードに協櫻製の部品が使われていた可能性が非常に高いのです。

一時的に想像しにくかったですね。ムーブメントの工場でも台湾の電子産業のOEM生産の歴史を経験してきたとは!次長の黄志光が私たちを隣の工場に案内し、自動化された電子式ムーブメントの生産設備を見せてくれました。(今はすでに台湾現代ミュージックベル博物館として改築されています。)

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かつて、協櫻の仕事帰りの従業員たちの様子を写した写真です。(画像の出典:台湾現代ミュージックベル博物館。https://www.facebook.com/sankyomusical/)

現在はすでに定年退職した黄次長が語ってくれました。

「当時は本当に注文が絶えず、従業員が多すぎたので、二つのグループに分けて昼休みを取るしかなかったのです。ただし、大量注文の一方で、価格は押し下げられ、低価格競争の苦境に陥ってしまいました。」

利益の減少と海外生産移転による注文数の減少ばかりでなく、生産規模の縮小により特殊材料の調達が困難になり、過剰在庫の問題も生じました。このような悪循環の中で、生産に必要な最低発注数量(MOQ)を満たすことがますます難しくなっており、協櫻の電子式ムーブメント事業はかつての栄光が失われました。

ムーブメントが繁栄から衰退への原因について

さて、話は変わりますが、台湾のオルゴール産業が繁栄から衰退に至った原因について、黄部長が語ってくれました。

「1981年(民国70年)には、オルゴールムーブメントの世界の年間需要量が9000万台を超え、台湾だけでも海外輸出の年間需要量が3000万台に達していました。」

しかし、戒厳令の解除に伴い、台湾のオルゴール産業チェーンが中国に移転し始めたため、下流メーカーから協櫻に対してムーブメントを台湾から中国へ出荷してほしいという要請がありました。輸出物流コストの上昇圧力の現状では、協櫻はやむを得ず中国の東莞市に工場を設立することにしました。が、その時、非純正ムーブメントや粗悪な模倣品が市場に流通し始めました。

「中国の競合他社は金型を開いて日本Sankyoのムーブメントを模倣しようとしただけでなく、品質基準や仕様を満たさなく廃棄された金型を利用して、こっそりとムーブメントの部品を生産し始めた工場でさえありました。」

この工場はベースをこっそりと売り、その工場はギア対をこっそりと売り、これらを寄せ集めた地下サプライチェーンが結成されたとは…しかし、最悪なのは、これらの仕様基準を満たさない金型で製造されたムーブメントは品質が劣っているため、オルゴール産業の名声を大きく傷つけたことです。

協櫻用卡車處理報廢音樂盒零件
協櫻が在庫品をトラックで破砕し処分している写真です。

「低価格で低品質のムーブメントが市場に流通し始め、市場を混乱させたので、日本の有名なブランドであるSankyoのムーブメントも大きな衝撃を受けました。」

戒厳令が解除された後、ムーブメントの需要量が急激に増え、一時は年間需要量が一億台近くに達したこともあります。しかし、現在では年間約4000万台にまで減少してきました。品質が劣る中国製の模倣品がその責任を逃れるべからず。

 

「ムーブメントが繁栄から衰退へのもう一つの原因は、米国が輸入されたムーブメントの音楽の著作権を調査し始めたことです。」

実は、ムーブメントの製造時に工場はその音楽の著作権を取得していますが、一部の貿易業者は音楽ライセンスの規制を怠り、米国でまだ許可を得ていない音楽のムーブメントを米国へ輸出してしまいました。これにより、米国音楽著作権協会が日本のSankyo純正工場に対して、著作権侵害訴訟を提起しました。長年にわたる訴訟が「らくだの背を折った藁」とは言えるでしょう。法に触れるのを避けるために貿易業者は新しいムーブメントの製品開発を控えるようになり、挙句の果てにムーブメントは徐々にスポットライトから姿を消し始めました。

台湾オルゴールブーム再来

台湾がオルゴールムーブメントを輸出から国内販売に切り替え始めたのは、約二十年前に、台湾経済が飛躍的な発展を遂げて以来、海外へ行く方が増えてきたため、海外でオルゴールという製品が注目され、プレゼントとして台湾に持ち込まれるようになったからです。

「例えば、『聴見幸福』は日本の小樽オルゴール堂を訪れた後、台湾に戻って起業し、手作りオルゴールのブームを巻き起こしたのです。」

小樽音樂盒博物館
「雲爸」より小樽オルゴール堂のお写真をご提供いただきました。

しかし、小樽オルゴール堂で使用されているムーブメントは、実は協櫻によって製造されてから日本Sankyoより供給されていることを知っている人が少ないでしょう。近年、最も有名な知音文創(Wooderful life)も協櫻の大口取引先です。様々な観光地、ギフトショップ、誠品(eslite)の店舗、そして台湾桃園国際空港(TPE)までも、彼らがデザインしたオルゴールをよく見かけます。知音文創は台湾を皮切りに、中国・香港・マカオ、アメリカ、イギリス、日本、韓国、シンガポール、オーストラリア・ニュージーランドなど25ヵ国以上で販売されています。

知音文創のオルゴールの展示ケース
知音文創(Wooderful life)のオルゴールの展示ケースです。撮影場所:台中国家歌劇院(National Taichung Theater)内にある知音文創の店舗。
聽見幸福用一杯咖啡的時間,帶您享受音樂盒演奏的美好時光
聴見幸福のカフェでは、コーヒー一杯分の時間でオルゴールの流れる音楽を楽しみながら、素敵な時間をお過ごしいただけます。(画像の出典:聴見幸福musikaffeeのサイトページ)

台北には、もう一つ非常に人気のあるオルゴール専門店「聴見幸福」があります。ここでは、様々なアクセサリーが揃っており、お客様が自分だけのオルゴールを作ることもできるし、店員さんが巧みな手つきで様々なテーマのラテアートも作ってくれるので、気持ちと創造力を表現したいお客様の欲求を満たしています。

オルゴールが台湾における40年の物語

次は、酷鳩チームが協櫻にインタビューして作成したビデオです。オルゴール産業の栄枯盛衰と時代の変遷を味わっていただければと思います。

現在、協櫻はすでに観光工場に転換しました。敷地内には主な建物が二棟あります。

一つは、旧生産ラインを改装した博物館で、館内には協櫻が製造したムーブメントで設計された様々なオルゴールと、私たちが開発したスマートオルゴール「Muro Box」を展示しています。それに、伝統ムーブメントの組み立て体験教室も用意されており、グループ・団体の方におすすめしております。

もう一つは、各ブランドオルゴールの販売センターで、DIYでオルゴールをデザインできます。そして、屋外には子供たちが喜ぶ小型アトラクション、ミニSL、展望台ツリーハウス、芝そり場などの施設も用意されています。

興味のある方は、ぜひこちらのサイトページ「台湾現代ミュージックベル博物館」で、最新のイベント情報やアクセス情報などをご確認ください。

台灣現代音樂鈴博物館內展示各式各樣的音樂盒
こちらが台湾現代ミュージックベル博物館で、ミニSLや子供の遊び場などの屋外施設が楽しめます。

付録:オルゴールが繁栄から衰退への原因、私たちの見解について

インタビュー中に、オルゴール産業が衰退に至った原因は、「中国の低価格競争・著作権に関する紛争」だと黄部長が述べました。酷鳩科技は数年にわたりオルゴール産業に携わってきたので、ここでは私たちの見解を補足して説明します。

まず、低価格競争は重要な要因ですが、衰退の主因だと認めません。価格の下落により全体的な出荷量が増えるはずですが、統計データによると、中国を含めた世界中のムーブメントの年間出荷量が、一億台から4000万台に減少しているということが判明しました。つまり、ほかの要因があるからこそ購入する人が少なくなり、価格が安くなってもこの傾向を変えようもなかったのです。

次に、私たちも著作権紛争が遠因だと考えています。情報技術の発展により、音楽の流通が実現され、音楽ジャンルや曲に対する好みもより多様化しています。音楽のライセンスを取得するコストが年々上昇していないにもかかわらず、好みの異なりにより、お客様が自分の好きな曲をオルゴールで見つけることもますます難しくなっています。さらに、価格の下落により、ムーブメント工場が音楽ライブラリを拡充する資金を確保することが難しくなり、悪循環に陥ってしまいました。

したがって、衰退の根本原因は、音楽ライブラリの拡充が時代に追いつけないことだと考えています。しかし、一曲をカスタマイズするには、一体コストがどのくらいかかるでしょうか?協櫻に尋ねたところ、コストは約NTD $25000(JPY $12万)だということが分かりました。(為替レート:NTD $1:JPY $4.85)
この値段にはムーブメントのシリンダー設計費・金型費・製作費・編曲費用は含まれていますが、著作権料は含まれておらず、しかも完成品がわずか15秒の音楽です。

技術的な視点から見ると、納得できますが、この値段は普通に受け入れられるわけではないことが明らかです。協櫻に尋ねたところ、会社の記録では、NTD $25000(JPY $12万)を支払ってカスタマイズされたオルゴールを入手したお客様が、結局一人しかいなかったそうです。(為替レート:NTD $1:JPY $4.85)

お客様が自分の好きな曲をオルゴールで入手できるよう、合理的な価格設定はムーブメント産業における主要な課題だと考えています。だからこそ、Muro Boxの開発を通じて、この問題が解決できればと思います。

現在、Muro Boxが2バージョン展開されました。半分以下の価格で、機械式オルゴールでお好みの曲が再生できるようになりました。自宅の小型自動ピアノのように、アプリを通じて好きなメロディーをオルゴールに入力すると、Muro Boxがあなたの作成したメロディーをそのまま演奏してくれます。音楽ソースは自作または自分で入力したメロディーですので、伝統ムーブメントにおける著作権・ライセンス問題や金型のハイコストなどの悪循環から脱出することにようやく成功しました。

台湾オルゴールの次のステップ

インタビュー中に、知らず知らずのうちに協櫻によって設計された様々なオルゴールがテーブルに並んでいました。ディスク式・シリンダー式・ストリング式のムーブメント、18弁・20弁・23弁・30弁・50弁のオルゴール、そしてコレクター向けの80弁のオルゴールまでも拝見しました。ただし、これ以上何もせずに、オルゴール産業を衰退させていってしまうと、台湾のムーブメント産業が短期間で消えていく恐れがあります。

これは人騒がせな言論ではありません。工場の稼働率が低く、観光工場に転換したという点からすると、オルゴール産業の光景はすでに見ることが叶わないのでしょう。

Muro Box スマートオルゴールの創業者夫婦は、Nidec Sankyoの台北オフィスにあるOrpheus大型ディスクオルゴールを見学しました。
こちらはOrpheusシリーズの80弁のディスクオルゴールで、最大で一曲60〜90秒ほどの演奏が可能です。

私たちの努力

協櫻会社のご協力のもとで開発されたスマートオルゴール「Muro Box」は、2018年に「ZECZEC」というプラットフォームでクラウドファンディングを実施いたしました。二百年にわたるオルゴール産業は常に存在しています。最も大事なのは、できるだけ多くの方々に現状を理解させ、関心を持っている方々にサポート方法をご提供することです。「ZECZEC」の募集期間中、プレオーダーしてくださった皆様に心より感謝申し上げます。皆様のご支援こそ、私たちにとって大きな励みとなっております。

智慧音樂盒Muro Box群募紀錄
Muro Boxが台湾で初めてクラウドファンディングを行った成果は、「ZECZEC」でNTD $205万(JPY $994万)を調達し、支援者数が332人だったということです。(為替レート:NTD $1:JPY $4.85)プロジェクトの詳細はこちら:https://www.zeczec.com/projects/murobox

2020年、私たちは台湾から一歩を踏み出し、Muro Box-N20のクラウドファンディングを国際プラットフォーム「Indiegogo」にて行い、無事に支援募集に成功し、USD $31万の調達を達成しました。同年(2020年)、日本の「GREEN FUNDING」にて行ったクラウドファンディングも成功を収め、JPY $1590万の調達を達成しました。現在、N20バージョンのスマートオルゴールはすでに安定した量産が行われており、オルゴールを愛する皆様は、ぜひ私たちの公式オンラインショップをご覧ください。

智慧音樂盒Muro Box - 影片縮圖
2020年にアメリカで行ったクラウドファンディングのメインビデオのカバー写真です。プロジェクトの詳細について、こちらの画面をクリックしてください。
這是我們2020年日本群募頁的截圖,了解當時專案成果請點圖進入群募頁面。
2020年に日本で行ったクラウドファンディングの成果です。プロジェクトの詳細について、こちらの画面をクリックしてください。

なお、世界50ヵ国の顧客からの要望に応えるため、半音を含む40音階まで音域を拡大させた「Muro Box-N40」の開発を決定しました。2023年、三つのクラウドファンディングサイトにてプレオーダー受付を開始しました。

  • Kickstarter-USD $18万の調達を達成
  • WaBay-NTD $415万(JPY $2000万)の調達を達成(為替レート:NTD $1:JPY $4.85)
  • Indiegogo-USD $3万近くに達しており、今も支援金額を集めている。(「Kickstarter」での募集期間終了後、海外の顧客にN40をプレオーダーいただけるよう、2023年も引き続き「Indiegogo」にてN40のプレオーダー受付を開始しました。)

 

オルゴール愛好者の皆様は、ぜひ引き続きフォローして、当社製品の最新情報をお見逃しなく! オルゴール産業をご支援いただければと思います。この全世界の美しい思い出を、これからも永遠に受け継いでいきましょう!

2023年に、海外の顧客をターゲットにしたN40のクラウドファンディングを「Kickstarter」で実施しました。(こちらはメインビデオのカバー写真で、支援募集は2023/11/25にて終了しました。)プロジェクトの詳細について、こちらの画面をクリックしてください。
2023年に、中国語圏の顧客をターゲットにしたN40のクラウドファンディングを「WaBay」で実施しました。プロジェクトの詳細について、こちらの画面をクリックしてください。
「Kickstarter」での募集期間終了後、海外の顧客にN40をプレオーダーいただけるよう、2024年も引き続き「Indiegogo」にてN40のプレオーダー受付を開始しました。詳細について、こちらの画面をクリックしてください。