STEAM教育を完成させる最後のピース:Muro Box(台湾)
南新中学校/南新科技センター — 王棋俊先生
STEAM教育を完成させる最後のピース:Muro Box(台湾)
南新中学校/南新科技センター — 王棋俊先生
実践から学ぶ「音」
学生の理解を深める
授業で生徒が一曲を完成させる姿を見るのは、理科教師としての喜びです!
理科教師である私は、これまで中学二年生の「音」の単元を教える際に、音の成り立ちの基本として、周波数・波形・波の速さなど、波に関する科学的な内容から授業を始めてきました。生徒たちに、周波数と振動の関係性をより実感してもらうため、質量やエネルギーといった概念も導入しています。例えば、「大きな物体を叩いたとき、小さな物体に比べて大きな物体のほうが振動(共鳴)しにくい」という内容を、太い弦と細い弦の比較を通して学ばせると、特に音楽コースの生徒たちは素早く理解してくれます。
机から少し突き出した定規を片手で押さえ、もう一方の手ではじいて振動させると、その突き出した長さによって定規の振動周波数が変化することがわかります。また、同じ形のガラス瓶に異なる水位を入れ、叩いて音を出しているときの振動周波数も異なります。
生徒たちがこの叩くことと吹くことで起こる振動の違いを説明できるようになり、さらにはクラスメートと協力して簡単な曲を演奏できるようになる――この一連のプロセスは、まさに貴重な学びの体験です。

STEAM横断型カリキュラムの開発
私は台南市教育局の幹部の皆さんや教育関係者の方々とともに、アメリカ・サンフランシスコを訪れ、現地のSTEAM教育(※1)の取り組みを視察する機会に恵まれました。音楽教室では、さまざまな楽器が授業に取り入れられている様子を体感し、その豊かさに感銘を受けました。帰国後は、テクノロジーセンター関連のプロジェクトを実施し、音楽に関連する多くの教材やカリキュラムの開発と実践に携わっています。
※1:STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の5つの領域を統合した、いわゆる「学際的教育」を指します。STEM教育の考え方をさらに発展させたもので、「手を動かしながら学び、課題を解決する力」を育て、芸術的な表現・技術・工学・数学の知識を組み合わせ、実生活での応用を視野に入れた教育手法です。


テクノロジーと音楽の融合
教材として最適なMuro Box
初期の授業では、楽器の製作にとどまる内容が中心でした。例えば、金管楽器(ビューグル)や親指ピアノ、水道管楽器、紙笛、紙製ピアノ、リズムパーカッション、手回し式レコードプレーヤーなどです。
しかし、Muro Boxに出会ってから、その革新性に心を打たれました。このオルゴールは、私たちのSTEAM教育カリキュラムを完成させる「最後のピース」だと強く感じただけでなく、その開発に込められた情熱と試行錯誤の物語も、「課題解決型・目的志向の最良の学びのモデル」として、生徒たちにぜひ伝えたい価値があります。
今回のSTEAM親子キャンプでは、電子ピアノを制作します。主な目的は、「プログラミングは実は難しくない」ということを伝え、ご両親にも教育カリキュラムへの理解と共感を深めてもらうことです。
授業の導入では、様々な楽器を使ったり、異なる大きさの同じ素材の物体を叩いたりして、「物体の大きさ」「振動」「周波数」の関係を体感的に学びます。その後、オルゴールのムーブメントを用いて、生徒たちは櫛歯、シリンダー、機械の仕組みについて学んでいきます。このプロセスで、かつて婚約者と訪れた小樽オルゴール堂で、あまりの種類の多さに持ち帰れなかった数々のオルゴールを思い出しました。
生徒たちの抑えきれない小さな驚きの声が上がるたびに、これはまさに台湾の誇りだと感じました。衛武営国家芸術文化センターのパイプオルガンと同じように、Muro Boxは偉大な存在なのです。
Muro Boxを授業プランにどう活用するか
電子ピアノ製作の授業では、生徒たちに電子音楽におけるオシレーター、フィルター、アンプといった構成について説明します。テクノロジーを取り入れたハンドメイドの音楽授業は、つまり電気信号の入力と出力を扱うことであり、デジタル信号とアナログ信号の切り替えを学ぶことでもあります。
Muro Boxは、テクノロジー系の授業で扱うIoT技術「MQTT」も提供しており、私たちが使用しているRaspberry Pi Pico Wの開発ボードとの相性も抜群で、最適な製品例と言えるでしょう。
生徒たちが一歩一歩はんだ付けを行い、自分の手でプログラム曲を完成させていく中で、アナログ信号とデジタル信号の違いがだんだん理解できるようになります。やはり、誰かが必ず「オルゴールの音量はどうやって変えるの?」と質問してきます。そのとき私は、異なる材質のテーブル(木製、ガラス、革など)に置いて音の違いを聴き比べてもらいます。さらに、Muro Boxアプリの便利さについても紹介しました。アプリで作った曲をそのままプログラムにも応用できるのです。
二回にわたって実施した授業の結果、時間がまったく足りないと感じました。三時間ではごく大まかな概略しか伝えることができません。次は中学三年生の音楽クラスの授業を担当しますが、その際には電磁気の単元に合わせて、モーター制御や電磁石制御の内容も補完できればと考えています。そのときもMuro Boxはきっと、私の良き教材パートナーになってくれるでしょう。唯一の悩みは……もう数台買っておけばよかった、ということですね!
※南新科技センターでこれまでに開催された授業内容にご興味のある方は、ぜひFacebook公式ページにて過去の記録をご覧ください!

どうやってMuro Boxに出会ったのか?
最初はクラウドファンディングでMuro Boxを知りましたが、まだ準備が整っておらず購入には至りませんでした。展示会や作品発表会で他の人の作品を見ながら、制作過程や課題を想像し、資源や実現可能性を考慮しながら制作方法を検討することは楽しいプロセスであり、学生たちに伝えたい理念でもあります。自分なりの解決策が見つかってから、改めて他の人の作例を見直したり、意見交換をしたり、材料や加工方法を変えてみたりすることで、実践的な経験がどんどん蓄積されていきます。
ある日、FacebookでMuro Boxの広告が目に留まりました。公式サイトを訪れてみると、Muro Boxをオンラインで体験できることを知り、すぐにアプリをダウンロードしました。スマホで編曲してストリーミングでMuro Boxの音色を聴いてみたところ、「これが欲しい!」という気持ちが一気に高まりました。
開発チーム全体の運営体制に深く感銘を受けただけでなく、私は製品開発の過程にも真剣に向き合いました。一つひとつの文章から伝わってきたのは、「絶対に諦めない」という強い意志でした。その姿勢に私は大いに励まされ、勇気づけられました。教材の開発で困難に直面しても、専門家として挑戦し続けること、そして根気強く答えを探す大切さを学びました。
そんな憧れの気持ちを胸に、妻に「無限に曲を奏でられるオルゴールが、ついに実現されたんだ」と伝え、Muro Boxを授業に取り入れる構想も話しました。そしてFacebookで連絡を取ってみたところ、驚くほど早く返信が来たのです――しかも、CEO本人から!この感動は言葉に尽くせません。開発プロセスを惜しみなく公開してくださる姿勢に、心から感謝しています。失敗の記録も含めて、プロダクトの価値を超えて文化的な資産になっていると感じました。
注文してからたった二日で商品が届き、Muro Box本体とともに、郵便の包みにはCEO直筆のメッセージカードも入っていました。すぐに楽しみつつ、これからN40の開発進捗を見守るのもまた、大きな楽しみの一つです。