Geert × Muro Box:音楽で紡ぐ五年間の友情
プログラマブル・オルゴールで紡ぐ思い出とインスピレーション(ベルギー)
Geert × Muro Box:音楽で紡ぐ五年間の友情
プログラマブル・オルゴールで紡ぐ思い出とインスピレーション(ベルギー)
文章が長くて読みきれない方のために、Podcast版をご用意しました。GeertさんがMuro Boxオルゴール編曲を通して歩んできた道のりを、「耳で」お楽しみいただけます。
あらすじ
ベルギー出身の音楽愛好家、Geertさんは、視覚に障害がありながらも、幼い頃から音楽を通じて自己表現をしてきました。彼はDIYが大好きで、手先も器用なので、自転車やアンティークの機械時計を修理したり、さまざまなものを組み立てることを楽しんでいます。
2021年、彼はIndiegogoのクラウドファンディングでMuro Box-N20標準版を支援し、N20オルゴールの使用体験を綴ったストーリーを執筆しました。その中で、目の不自由な方でも簡単に編曲できるよう、アプリのアクセシビリティ向上に取り組んだMuro Boxチームへの感謝を、特別に記しています。
Geertさんは視覚に障害がありますが、その鋭い聴覚と触覚を通して、オルゴールの外観や構造を豊かに想像しています。さらに彼は、アプリ内の誘導ボタンや画面における音声ガイドの文言改善をはじめ、製品外観に関する提案など、私たちのチームに多くの貴重なフィードバックを届けてくれました。彼が実際にご自身で編曲・創作を試しながら、さまざまなニーズを検証し、素晴らしい提案を重ねてくれました。この5年以上にわたる継続的な協力のおかげで、Muro Box はより一層、音楽を愛するプレイヤーのための編曲・演奏体験に寄り添った製品へと進化し続けています。
本記事では、Geertさんがこれまで使用してきたN20およびN40オルゴールの体験談を紹介するとともに、オルゴール編曲を通じて、どのように生活のインスピレーションを独自のメロディーに変えているかをご紹介します。
Muro Box-N20オルゴールと初めての出会い:クラウドファンディングでの支援と創作のきっかけ
子どもの頃の好奇心と一人バンドの誕生
幼い頃から、自分の声や車の音、ピアノ、父のオートバイなど、さまざまな音を録音するのが好きでした。自分で「歌う」声も録音し、ラジオで聴いた曲の要素を真似してみることもありました。
小学校の頃にはピアノと音楽理論を学び、数年後には当時流行していた曲を自分なりにアレンジして録音するようになりました。
高校に入ると、正式なレッスンはやめ、耳で聴いて演奏する方法に切り替えました。気づけば、いつの間にか私は「一人バンド」を作っていたのです。ドラム、シンセサイザー、ピアノ、そして歌──すべて一人で演奏していました。
カセットテープ録音からデジタルマルチトラック録音へ
初期はカセットテープを使って音を重ねて録音していましたが、音質は良くありませんでした。しかし、それが私の始まりです。
パソコンでマルチトラック録音の概念を知ったとき、すべてが変わりました。最初のパソコンは動作が遅すぎましたが、より速いパソコンに替えてからは、デジタル録音に完全に没頭できるようになり、サウンドエフェクトやリバーブ、サウンドの変形なども加えられるようになりました。
さらにギターも学び、MIDI信号を送れるデジタルピアノを購入することで、DAWやバーチャル楽器の世界を探求し始めました。
私が初めてN20オルゴールで編曲した曲:Kerstied(クリスマスソング)
2021年、私はMuro Box-N20のクラウドファンディングを支援しました。私にとって、オルゴールは忘れ去られた存在でありながら、奇跡に満ちたものの象徴です。そのシンプルな構造からは想像できない、美しい音色を奏でるのです。
実は、Muro Boxを知る以前から、私はオルゴールを「小さくて忘れられがちだけれど、奇跡を秘めたもの」として捉えていました。
多くの人は、オルゴールは時代遅れで、デジタル音楽の時代にはもう必要ないと思っています。しかし一方で、オルゴールはまさに奇跡です──ただの櫛歯とピンのついたシリンダーの組み合わせなのに、こんなにも美しく心を動かす音を生み出すのです。
もしオルゴールの櫛歯を分解したことがあるなら(私は子どもの頃やったことがあります😊)、その簡単さを忘れられないでしょう。ネジを一、二本外すだけで分解できるのに、元に戻して、オルゴールを完璧に演奏させるのは極めて難しいことなのです。
この新旧の対比・矛盾の概念は、イエスの誕生物語とも呼応しています──拒絶され、馬小屋で生まれながらも、救世主として迎えられるという物語です。
私は、現代風にアレンジしたイエス誕生物語を創作しました。タイトルは《De muziekdoos en de stal》(オルゴールと馬小屋)です。この作品は、私が自転車修理工場で働いていた際に出会った、依存症からの回復途上にある人々を含む、さまざまな背景を持つ人たちとの関わりから着想を得たものです。
この物語は、一部は私の想像によるもので、一部はイエス誕生の物語に基づいています。物語に登場する薬物中毒者や麻薬の売人は、私なりの現代的な解釈として加えたキャラクターです。
なぜこの二つの役柄を加えたかというと、同じ年に私は自転車修理工場で働き始め、その工場ではさまざまな背景を持つ方々が雇用されていました。その中には、過去に薬物依存症の経歴を持つ方もいました。彼らは、この現代版クリスマス物語における「羊飼い」のような存在だと考えました。
この物語を創作する過程は非常に楽しく、最終的に《De muziekdoos en de stal》(オランダ語で「オルゴールと馬小屋」)と名付けました。また、この物語のための音楽を作ることも大いに楽しみました。
実は、この曲はもともとMuro Box専用に作曲したメロディーで、物語を思いつく数週間前に、すでにMuro Boxアプリにアップロードしていました。このMuro Box バージョンは、アプリ内で今も聴くことができます。「Kerstlied」(オランダ語で「クリスマスソング」)と検索すれば見つけられます。
(Geertさんの作詞に興味がある方は、上記のMuro Box-N20演奏動画をご覧ください。YouTube動画の説明欄には、歌詞が全文掲載されています。なお、Geertさんご自身での動画撮影が困難なため、私たちが委託を受けて、彼の編曲の成果を Muro Box 公式YouTubeチャンネルにアップロードしました。)
https://murobox.com/jp/online-music-player-v3/slug_9da7276ee54a44e8ae6f31ce43e84b72/
(補足:上記のオンライン曲ライブラリのウェブ版を使って、Geertさんが編曲した「Kerstlied」をお楽しみいただけます。
ライブ視聴ウィンドウ内の3種類のオルゴールは、それぞれ音色が異なります。機種名の略称をクリックして、オルゴールを切り替えながら比較してみてください:
N40:N40標準版、N40SLM:N40サブライム版、N20:N20標準版。)
この物語を書こうと決めたとき、「Kerstlied」のメロディーが物語のBGMとして非常に適していることに気づきました。そのメロディーのAメロ部分はシンプルで短いため、何度も繰り返すことができ、伝統的なオルゴールのスタイルを模倣するのにぴったりだったからです
そこで、同じMIDIファイルをDAWに取り込み、少し編集してAメロを5回繰り返すようにしました。その上で、他の楽器(ヴィブラフォン、チャーチオルガン、教会の鐘の音、コーラス効果音、ギター)や私のボーカルを加え、物語の雰囲気をより豊かに表現できるようにしました。
そして、最も不思議な瞬間は、Muro Box N20をパソコンに接続し、DAWを通じてMIDIデータを送信したときに訪れました。Muro Boxは機械的に櫛歯を弾く必要があるため、一定の遅延が発生することに気づきました。そこで、MIDIトラックを少し早めに再生するよう調整し、他の楽器と同期させました。
すべてが整ったとき、Muro Boxはなんと、他の楽器やボーカルと完璧に同期して演奏したのです!最終的なオーディオファイルにMuro Boxの音色を組み込むために、Muro Boxの音を別トラックで録音し、ミックスして作品に反映させました。
最終ミックス版を聴いたとき、Muro Boxの音色が他の楽器やボーカルと完璧に溶け合い、私は感動しました。この作品には大変満足しています。オルゴールは物語に溶け込み、全体の音楽とも見事に調和しているのです!
視覚障がい者としてのメロディー創作法
多くのユーザーとは異なり、私はアプリのグラフィカルな編曲インターフェースを使用しません。視覚障がい者として、私はデジタルピアノを使ってMIDIを録音する方法を採っています。
録音したMIDIデータはUSBメモリに保存し、それをアプリにインポートします。 この機能を開発してくれたMuro Boxチームには本当に感謝しています。自分が作ったメロディーをMuro Boxが初めて奏でるのを聴く瞬間は、いつも純粋な魔法にかかったような気持ちになります。
継続的な創作活動とコミュニティでの共有
ヨーロッパのいくつかの国(私が住むベルギーを含む)では、こんな伝統があります。聖ニコラウスは良い子どもたちの友達で、毎年12月6日にキャンディやチョコレート、おもちゃを届けます。
そのため、この日が近づくと、子どもたちは聖ニコラウスに関するたくさんの童謡を歌います。私も思わずMuro Boxで小さなプレイリストを作り、こうした曲を集めました。これらの曲を聴くと、自分の子ども時代を思い出すからです。
このプレイリストは「Sinterklaas」(オランダ語で「聖ニコラウス」)と名付けられ、現在でもMuro Boxアプリで見つけることができます。
2021年の時点ですでに、私は曲を創作し整理した後、N20がこのプレイリストを奏でる音を録音してMP3ファイルを作成しました。そして、同じようにオルゴールの音色を愛する旧友にそのファイルを送りました。
最近になって彼女が教えてくれたのですが、落ち込んだり困難に直面したりしたとき、彼女はそのMP3を再生するのだそうです。すると、焼き立てのクッキーの香りを想像して、瞬間に気分が晴れやかになるのだと言っていました。
2024年12月6日の朝、友人が訪ねてくることになっていたので、私は彼女を驚かせようとチョコレートを買い、さらに手作りでクッキーを焼き上げました。
彼女が到着したとき、私は「ちょっとトイレに行ってくるね」と伝えました。それは嘘ではありませんでしたが、彼女が知らなかったのは、私はこっそりスマートフォンを持ち込み、「聖ニコラウス」プレイリストを再生していたことです。そして彼女が一人でリビングにいる間、まるで Muro Box が魔法のように命を吹き込まれたかのように、彼女の子ども時代に親しんだ懐かしいメロディーを次々と奏で始めたのです。
私がリビングに戻ると、彼女はいっそう驚いた様子で、興奮しながら「もう一度 Muro Box でこの曲を聴かせて!」と言いました。その後、彼女はこう言ってくれました。「Geert、なんて素晴らしい朝なの。まるで聖ニコラウスからプレゼントをもらったばかりの子どものような気分だわ。」
耳鳴りとシンプルな創作ギフト
過去十年間、私はずっと耳鳴りに悩まされてきました。耳鳴りがひどい日には、以前のような「一人バンド」のスタイルで創作を楽しむことができませんでした。
しかし、Muro Boxのためにメロディーを紡ぐことは、それでも楽しいものでした。複雑なミキシングも、音響効果もなく――ただ純粋なメロディーだけです。
たとえ困難な日々であっても、Muro Boxは私に美しい作品を生み出す力を与えてくれます。そのことに、心から感謝しています。
(注:この曲のタイトル「Zie ginds komt de stoomboot」はオランダ語で、英語では「Look, there comes the steamboat」と訳されます。オランダの伝統的な聖ニコラウス祭(Sinterklaas)の歌の冒頭の一節で、聖ニコラウスが蒸気船で到着する様子を描いており、祝祭感と子どもらしい楽しさにあふれています。)
N20オルゴールで楽しむ「曲名当てゲーム」
私が Muro Box N20 を手に入れて以来、両親の好きな曲を次々とアプリにアップロードしてきました。そのため、新しい曲を上げるたびに、彼らが家に来たときに曲名を当てるクイズを出しています。これが徐々に定番の「小さなゲーム」になり、時には正解できることもあれば、悩んでしまうこともあります。
時々、父は動いているMuro Boxを眺めながら、感心したようにこう言います。「この機械装置は本当に素晴らしい。こうして動いているのを見るのはとてもいい気分だ。こんな精密な機械構造を正確に動かすために、きっと多くの時間が費やされたのだろうね。」
2024年の大晦日、私は再びこの「曲名当てゲーム」を楽しみました。二人の友人を招いて新年を祝ったのですが、彼らは夕食の準備を担当し、私は音楽クイズを用意しました。
夕食の後、私たちは一緒に座り、この音楽クイズを始めました。その中で二問、Muro Box N20 が再生する旋律を聴いて曲名を当ててもらう問題を出しました。
私の両親も友人も、正解を当てるのは決して簡単ではないことに気づきました。というのも、Muro Boxでの演奏は、必ずしも原曲と全く同じアレンジではないからです。しかし、それこそがこのゲームの醍醐味です。「えっ、これ何の曲?」「あ!わかった!」「いやいや、違う、あっちの曲だ!」といった声が飛び交い、いつも驚きと笑いに包まれます。
Muro Box チームと築いた、顧客の枠を超えた国境なき友情
2020年に初めて Muro Box チームと出会って以来、私は彼らが、今日では珍しいほどの献身的な情熱と、顧客への深い思いやりを持っていることに気づきました。世の中には、自社が提供する製品やサービスを本当に大切に思っているのか、疑問に感じてしまうような企業も少なくありません。
しかし、Tevofy(Muro Box の開発会社名)は全くの正反対でした。彼らは私のような視覚障害者でもアプリが操作できるように、すぐさまアクセシビリティの対応を行ってくれました。そして、私の質問には非常に丁寧かつ親切に答えてくれました。
正直なところ、私は最初、彼らに対しても懐疑的な見方をしていました。他の多くの企業がそうであるように、「まずは顧客を惹きつけることに必死で、一度手に入れてしまえば、その後はあまり気にかけなくなるのではないか」と心のどこかで思っていたからです。
しかし、彼らとの交流を重ねるにつれて、その考えは何度も覆されました。2025年になっても、最初に出会ってから5年経っても、彼らの製品や顧客への思いやりは減るどころか、さらに深まり、時には顧客への感謝の気持ちへと発展していました。
私を例に挙げれば、オンラインライブラリに旋律を追加したり、アプリの不具合を報告したり、視覚障害者にとって使いづらい機能を指摘したりといった小さなことでも、彼らは非常に重視してくれました。
彼らは私のことを「いつも細かくて変なアクセシビリティの要望を出してくる視覚障害者」として扱うのではなく、むしろ感謝の気持ちを持って接してくれ、連絡を取るたびにその大切にされていることを実感させてくれました。
私たちは5年もの間、メールをやり取りしており、その交流はもはや友人同士の文通に近いものがあります。これが、私が単に優れた製品を買った客として終わるのではなく、この会社に深い愛着を持ち続けている理由です。
彼らが困難に直面したり、物事がうまく進まなかったりするとき、私はいつもサポートのメッセージを送らずにはいられません。私の小さなメール一本で問題や状況が変わるわけではなくても、彼らはいつも心から感謝してくれます。
KIKK ベルギー展示会:N40 オルゴールに触れた感動
2025年10月、私はベルギーで開催されたKIKKフェスティバルで彼らに直接会う機会に恵まれました!その出会いは非常に温かく友好的なものでした。外国語で深い感情を表現するのは得意ではありませんが、彼らのブースで心からの歓迎を感じたことは間違いありません。
彼らは快く最新モデルに触れさせてくれ、その仕組みを丁寧に説明してくれました。さらに嬉しかったのは、以前私が提案した電源やMIDI端子の配置などを採用してくれていたことで、そのおかげでケーブルの抜き差しがよりずっと楽になっています。
この出会いの後、友人のAnnickさんが私にこう言いました。「Geert、あなたがそこにいるとわかった瞬間、彼らの顔がぱっと明るくなったんだよ。本当に素敵な驚きだったわ!」
彼らが自社製品を大切にしていることは、以前から知っていましたが、今回、彼らがほとんど子どものように製品を扱っているのを目の当たりにしました。私はその時、そして今この瞬間も、心の底から深く感動しています。
まとめると……台湾では、このような手厚いカスタマーサポートや製品への深い愛情は当たり前のことなのかもしれません。私には分かりませんが、少なくとも私の住むベルギーにおいて、顧客と製品に対してこれほどまでに真心を尽くす企業に出会えたことは、大きな心の支えであり、喜びです。
私はこれを言うのは初めてではなく、最後でもありませんが、本当にすべての会社がTevofyのようであってほしいと願っています!
私のN40サブライム版オルゴール使用体験
使用4日後の第一印象
パッケージ
これこそ、私が最も好きな開封方法です!「共鳴箱そのものが梱包箱を兼ねている」という設計が、私はたまらなく気に入っています。共鳴箱は大きな中空の箱なので、オルゴール本体とすべての付属品を安全に収納するのに、まさにうってつけのスペースなのです。
そしてさらに気に入っているのは、中身を取り出すために、まず8本のネジを外して蓋を開けなければならないという点です。その後、共鳴箱として使用する場合は、また蓋を戻して8本のネジを締め直す必要があります。これは最高です!私はこうしてネジをいじる作業が大好きなんです。
それだけでなく、全ての物は非常にしっかりと安全に保護されており、輸送中に損傷することはまずありません。そして、この梱包方法は簡単に再利用できるため、将来もしオルゴールを別の場所へ送ったり運んだりする必要が出てきても、そのまま活用できます。ですので、私は必ず全ての梱包材を保管しておきます!
共鳴箱の組み立て
共鳴箱の脚を取り付ける際にネジを締める作業は、私にとってさらに楽しい作業です!サウンドポストの長さを正確に調整するのもとても簡単で、蓋をかぶせるときは、サウンドポストが倒れないように注意するだけで済みます。
唯一の小さな提案としては、小さな金属製防振パッドを脚座に固定するか、もしくは着脱可能な設計にできると良いかもしれません。現在は脚座の下に置くだけなので、共鳴箱を少し動かすだけで落ちてしまいます。ただし、通常使用時には十分に効果があります。
また、脚座の高さを調整できるため、机や設置面の凹凸を補正できる点も非常に素晴らしいですね!
オルゴール本体
これは非常にしっかりした機械装置で、私のN20と同じです。私が最初に気づいた改良点は、ノブの位置がオルゴールの正面に配置されたことです。これにより操作が便利になり、伝統的なオルゴールのゼンマイ巻き上げつまみのような感覚も味わえます。
また、背面のUSB-C端子は本体に深く差し込める設計になっており、ケーブルの抜き差しが非常に簡単です。さらに、5ピンMIDI信号受信を制御するスイッチも気に入っています。もし他の多くの企業であれば、ステータスをLEDランプで表示する「一度押すとオン、もう一度押すとオフ」になるような電子式のモーメンタリスイッチを採用していたでしょう。
しかし幸運なことに、Muro Boxは伝統的な「押すとカチッと入り、もう一度押すとカチッと戻る」というスイッチを採用しており、シンプルで誰でも簡単に操作できます。
さらに驚いたことに、透明な蓋の四隅にもネジがあるのです!このネジを外せば、2本の金属バーと蓋を完全に取り外すことができます。これは本当に絶妙な設計です。蓋の下にある機械構造に、ついに自分の手で触れられるようになったのですから。私のようなメカ好きにとって、これほど興奮する改良はありません。
ちなみに、この機械構造は本当に精巧で美しいです!その品質には圧倒されます。現代では非常に珍しいレベルです。もう、すっかり惚れ込んでしまいました!
ぜひご試聴ください:
同じ楽曲でも、N40サブライム版オルゴールとN20オルゴールの演奏では、一体どのような違いがあるのでしょうか?
以下は、Geertさんが友人のAnnickさんに依頼して、2025年10月末に自宅で撮影したN40サブライム版オルゴールの演奏記録動画です:
以下は、私たちのチームが2021年5月にGeertさんから編曲データを受け取り、当時のN20標準版オルゴールで録音・撮影した記録動画です。なお、現在のN20標準版は、音質がさらに向上しております。公式サイトの商品ページでは、より新しく撮影された高音質な動画を多数公開しておりますので、ぜひそちらも併せてご試聴ください。
音色
正直に言うと、最初は「Sublime(サブライム)ハーモニー」の音色に対して、少し疑問を持っていました。私の中で、オルゴールの音色はいつも子ども用オルゴールのようで、このようなハーモニーはないものだと思っていたからです。
おそらく、これまでSublimeハーモニーを持つアンティーク・オルゴールを所有したことがなかったせいかもしれません。しかし、このオルゴールと過ごす時間が長くなるにつれ、その音色にどんどん引き込まれていきました。使い始めてわずか四日後には、これがなんと素晴らしく、まるで天国のような音色であるかに気づかされたのです。
このSublimeハーモニーと柔らかい弦の響きが合わさることで、音色は絹のように滑らかで、どこか幻想的な浮遊感さえ感じさせます。そして、どれほど注意深く耳を傾けても、雑音や余計な共鳴が一切聞こえてこないのです!
複数の音符を同時に演奏しても、音が混ざって雑になることもなく、途切れたりもしません。総じて、とても心地よく、リラックスできる音色で、私は大変気に入っています!
加えて、速い旋律の処理においても、手持ちのN20よりずっとスムーズであることに気づきました。N40サブライム版は、ほぼすべての音符を完璧に、そして極めて滑らかなリズムで奏でてくれます。私のN20は初期バージョン(正確にはIndiegogo版)ですので、現在のN20も同様に改良されているのだとは思います。
総じて、これによりより複雑な伴奏やメロディーの作曲が可能になり、N40サブライム版上でも素晴らしい演奏効果を得られます。
アプリ
このアプリにはすでに慣れていますし、皆さんもご存じのとおり、私はその完璧なアクセシビリティ設計がとても気に入っています。本当に使いやすいですね。そして今回、2台のMuro Boxを同時に所有することになったので、ようやく「Muro Box の切り替え」機能を試すことができました。その結果に本当に驚きました!操作がとてもスムーズで、どちらの Muro Box を操作するかを短時間で自由に切り替えられるのです。
一つだけ小さな提案:
N20をアプリに接続している際、もしN40用のメロディーを再生しようとしたらアラートを表示させるか、あるいはN20接続時にはN40用の楽曲を非表示にすることはできないでしょうか?
というのも、N20は半音に対応していないため、N40 用のメロディーを再生するととても不自然な音になってしまいます。N20 と N40 の違いをよく知らないユーザーにとっては、この再生体験があまり魅力的に感じられない可能性があります。
(Geert さんからのご提案をいただき、誠にありがとうございます。現在、N20接続中のユーザーに対し、N40の楽曲を選択した際に「音階が足りないため正しく演奏できない可能性がある」旨を知らせるリマインド機能の追加を計画しております。)
私のN40オルゴール編曲を、ぜひ聴いてみてください!
1.《Aan het Noordzeestrand》(オランダ語:「北海の浜辺にて」)
この曲をアプリにアップロードした際、楽曲の説明欄にこのような言葉を添えました:
「今日は『万霊節(All Souls’ Day)』を祝い、亡くなった親族や友人たちを偲ぶ日です。ふとした瞬間に、幼い頃のある思い出がよみがえってきました。それは、祖母が私のそばにいて、一緒にグラモフォンでSPレコードを聴いていた時のことです。
その中の一枚には、Jan Verbraeken が歌うフランドルの曲が収められていました。1950年代のヒット曲で、当時のフランドル地方では録音音楽はまだ新しいものでした。
祖母は若い頃からこの曲に親しんでいたので、いつも一緒に歌っていました。子供の頃の私はその意味を深く考えていませんでしたが、大人になった今思い返すと、祖母はあの時間を心から楽しんでいたのだろうと思います。」
2. The Day Before You Came
この曲はスウェーデンのバンド ABBA の有名な楽曲です。とても美しい曲なので、長年この曲を使って何か表現したいと思っていました。私の頭の中では、テンポを少し遅くして編曲を簡略化したり、時には歌詞を少し変更したり……そんなことを考えていましたが、なかなか実現には至りませんでした。
それが今日、ふと思いついたのです。「そうだ、この曲だ。N40用のバージョンを作ろう」と。ですので、この短い楽曲紹介を書いている時点では、まだ自分のN40で実際に奏でられる音を聴いていません。期待通りの仕上がりになっていることを願うばかりです。🙂
この曲自体の美しさはもちろんですが、聴くたびに子供の頃の思い出がよみがえります。当時、私たちはよくクノッケ=ハイスト(Knokke-Heist)に行き、叔父と叔母はそこで素敵なアパートを借りていました。そこでラジオでこの曲が流れるのを聴いたことを今でも覚えています。そのとき、私はその音楽性に深く魅了されたのでした。
3. Everyone’s Gone to the Moon
これはイギリスの歌手、ジョナサン・キング(Jonathan King)が1960年代に発表したヒット曲で、私の中に多くの思い出を呼び起こしてくれます。
一つ目の思い出は、2011年から2014年にかけてネットラジオのDJを務めていた時に、この曲を流したことです。プレイリストを作成するまでこの曲を知らなかったのですが、すぐに私のお気に入りの一曲になりました。
二つ目の思い出は、2023年に自分の「一人バンド」スタイルでこの曲をカバーした時のことです。当時、白血病で亡くなった友人がいて、彼も60年代の音楽が大好きでした。なぜか分かりませんが、このバージョンを作るとき、ずっと彼のことを思い浮かべていました。洗濯機の脱水音を録音して曲の最後に入れ、ロケットの打ち上げ効果を演出したことも覚えています。
三つ目の思い出は、同じ年の登山休暇中に、この曲をライブで披露した時のことです。最終日の夜に設けられたフリーステージで、誰かが電子ピアノを持ってきていたので、ピアノの独奏に合わせて少しアレンジして歌うことにしました。
しかし、その時は気づかなかったのですが、後で誰かが録音してくれた演奏を聴き返して、愕然としました。歌声には感情がこもっておらず、音程も外れ、声が不安定に震えていたのです……。私はその場で、二度と人前でライブ演奏はしないと決めました。歌っている最中にその異変に全く気づけなかったことで、耳鳴りが自分の聴覚に影響を及ぼし、本来聴き取るべき音が聞こえなくなっているのだと悟ったからです。
ですが、この決断によって悲しみを感じることはありませんでした。今でも一人バンドとして音楽制作を続けられることに喜びを感じていますし、何より、Muro Boxという名のこの素晴らしいオルゴールのために、新しい旋律を書き続けられるのですから。
4. The Young Ones
この曲は、イギリスの歌手クリフ・リチャード(Cliff Richard)の《The Young Ones》です。N40 サブライム版で演奏すればきっと素晴らしい響きになると確信していました。また、友人のAnnickさんがクリフ・リチャードの大ファンなので、ピアノでこの曲を弾くときには特に彼女のことを思い浮かべました。